太田和之税理士事務所

コラム

貸倒損失~事実上の貸倒れ~

2023年6月29日

前回、法律上の貸倒れについて解説しました。

今回は事実上の貸倒れについて解説します。

 

事実上の貸倒れ

・金銭債権につき、その債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになった場合

 

法人税基本通達9-6-2に規定されています。

法的には権利は消滅していないが、実質的に回収は不可能というケースです。

ただし、実務上は計上時期や税務署が納得しやすいようにあえて「債権放棄」をして、前回解説した「法律上の貸倒れ」にしてしまう税理士も多いと思います。

注意点としては金銭債権の「全額」が回収できないとなっている点で、部分的に回収できない場合は個別評価による貸倒引当金を設定する事により損金処理します。

 

なお、事実上の貸倒れは法律上の貸倒れと違い損金経理が要件ですので、法人税の申告書で調整する事は出来ません。

担保物があるときも注意が必要です。担保物を処分した後でなければ貸倒れとして損金経理する事が出来ないのです。

 

形式上の貸倒れ

・継続的な取引を行っていた債務者の資産状況、支払能力等が悪化したため、その債務者との取引を停止した場合において、その取引停止の時と最後の弁済の時などのうち最も遅い時から1年以上経過したとき
・同一地域の債務者に対する売掛債権の総額が取立費用より少なく、支払を督促しても弁済がない場合

 

注意点として不動産取引のように単発の取引による売掛債権については、この取扱いの適用はありません。

また、形式上の貸倒れは売掛債権についての取り決めですので、貸付金等については適用できない事になります。

 

通達上は売掛債権の額から備忘価額を控除した残額を損金経理したときはこれを認めるとされています。

形式上の貸倒れは回収可能性が全くないとは言い切れない場合も対象ですので、もし回収できた場合に備えて備忘価格を残しておき、取引先台帳から債務者を抹消しないように求めています。

 

 

なお、事実上の貸倒れは全額債権の回収見込みがないことが明らかな場合に認められる取扱いですので、要件が厳格です。一部でも回収可能性が残っていては認められません。

その点形式上の貸倒れは形式基準による貸倒れである為否認リスクは少ないと言えます。

 

 

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