コラム
マイクロ法人
2025年7月25日
こんにちは、愛知県安城市にある税理士事務所、太田和之税理士事務所です。
近年、「マイクロ法人」という言葉を耳にする機会が増えています。
副業やフリーランスといった働き方が広がる中で、個人事業主が節税や社会保険料の見直しのために「法人化」を選ぶケースが増えております。
その中でも社会保険料削減を目的とした最小単位の法人=「マイクロ法人」の設立が注目されています。
今回は、マイクロ法人の概要から、実際に活用する際のメリット・デメリット、注意点について解説をしていこうと思います。
マイクロ法人とは?
「マイクロ法人」とは、特定の法律用語ではありませんが、「代表者1人、社員も1人(あるいは0人)」というような最小規模で運営される法人のことを指します。株式会社でも合同会社でも構いません。
私の知る限りでは、作家の橘玲さんが著書『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎文庫)でこの言葉を使い始めたのがきっかけではないかと思います。
概念自体は古くからあり、税理士業界では昔から活用されていました。
マイクロ法人の主なメリット
1.社会保険料の圧縮が可能
マイクロ法人の最大の目的は、社会保険料の削減にあります。
個人事業主の場合は国民健康保険の加入が必要ですが、国民健康保険料はその人の年収によって変動するため高所得の人ほど負担が大きくなります。
例えば年収1,000万円の人の場合は年間100万円程度の国民健康保険料を支払う必要があり、この金額は今後も増えていくことが予想されます。
ところが同じ年収1,000万円の個人事業主がマイクロ法人を設立して、役員報酬を月6万円だけ受け取っていたらどうでしょうか。
法人の役員は原則社会保険の加入が強制されます。そして社会保険に加入している人は国民健康保険に加入することは出来ません。
つまり、今まで年間100万円支払っていた国民健康保険料を支払う義務が一切無くなるのです。
同様に、国民年金の支払いも不要となり、年間約20万円の負担軽減が見込めます。
一方で社会保険に加入しますので、健康保険料と厚生年金保険料は会社経由で支払う事になります。
こちらの金額は法人から支給される給与の額を元に計算されますので、月給6万円の場合、会社と本人の負担を合計しても月23,000円前後に抑えられます。
今まで国民健康保険と国民年金で年120万円支払っていたのが、マイクロ法人を作るだけで約5分の1にまで削減できるのです。
もちろん保証は同じ、むしろ国民年金が厚生年金に切り替わったことで将来貰える年金が増えるくらいです。
マイクロ法人のデメリット
1.法人設立費用が掛かる
法人を設立するには法務局で登記をする必要があります。
ご自身で行うことも出来ますが、出来ればプロの司法書士さんにお願いしたいところです。
この際の費用は登録免許税などを含め、司法書士に依頼した場合は30~40万円程度を想定しておきましょう
2.法人の維持費がかかる
法人は、たとえ赤字であっても最低年7万円の法人住民税がかかります。また、決算申告や登記維持などのコスト・手間も必要になります。
法人の決算申告には専門知識が必要ですので、出来れば税理士へ依頼していただけるのがよいと思います。
依頼する税理士によりますが、年間30~40万円くらいの費用が必要になります。
3.このスキームは将来使えなくなる可能性も
現状マイクロ法人を使った社会保険料の削減は法的な問題はありません。
ただ一方で、著しく公平性に欠くシステムであることは事実です。
そのためここ数年でマイクロ法人を批判する声が大きくなってきました。
制度上すぐにこのスキームが使えなくなることはないとは思うのですが、今後どこかで法整備がされて利用が難しくなるかもしれません。
実際にマイクロ法人を設立する流れ
1.まずは専門家に相談
実際に得をするのか、どういった手続きが必要か、これらは個々人によって異なります。
まずは税理士などの専門家に相談をするのがよいと思います。
弊所は相談まででしたら無料でお受けしております。
2.法人設立
マイクロ法人を設立が決まったら、法務局で法人の登記をする必要があります。
費用は掛かりますが、出来れば司法書士さんにお願いした方が安心です。
その際に組織形態を株式会社か合同会社を選ぶ必要がありますが、基本的には設立費用の安い合同会社でいいと思います。
後述しますが資本金は100万円程度は入れないと銀行口座の開設が難しくなります。
3.税務署等への届出
法人が設立されたら、次は税務署等へ開業の届出をしなければいけません。
決算申告の際に税理士さんに依頼する予定であるなら、この時点で税理士さんと顧問契約を結び届出関係もやってもらいましょう。
4.銀行口座の開設
意外と難問になるのが銀行口座開設です。
近年はマネーロンダリングの対策でペーパーカンパニーの口座開設は非常に難しいです。
本店所在地がバーチャルオフィスであったり資本金額が著しく低かったりすると、口座開設の難易度が跳ね上がります。
税理士さんか司法書士さんに銀行を紹介してもらうか、GMOあおぞらネット銀行さんのようなネット銀行を利用すれば比較的開設しやすいかと思います。
5.社会保険の加入
法人の体裁が整いましたので、ようやく本題の社会保険の加入です。
基本的には謄本などの必要書類を持って、管轄の年金事務所で手続き可能です
こちらも社会保険労務士さんに依頼して手続きしてもらってもよいと思います。
いかがだったでしょうか。本記事ではマイクロ法人を使った社会保険料削減のスキームを紹介させていただきました。
マイクロ法人は確かに大きな節税メリットがありますが、使い方を誤ると本末転倒になることもあります。制度を正しく理解し、専門家と一緒に設計していくことが重要です。
「もっと詳しく話を聞きたい」と思った方は一度是非弊所にご連絡ください。
太田和之税理士事務所では税務調査対策に力を入れております。
安城市以外でも刈谷市・碧南市・大府市・豊田市・豊橋市等の愛知県全域に対応しておりますので、ご興味がある方は是非一度ご連絡ください。