太田和之税理士事務所

コラム

青色申告取消しの要件①

2022年3月18日

実質延長となった電子帳簿保存法ですが、現場を戦々恐々とさせていたのが「電子帳簿保存法に従って書類を保存しなければ青色申告の承認の取り消しもありうる」とされていた点です。

電子帳簿保存法について語る事は数多くあるのですが、今回は実務的にも重要は「青色申告の承認の取り消し」について解説したいと思います。

 

税務調査においては「この帳簿状況では青色申告の取り消しもありうる」と脅されたうえで、「しかし、今回はここの否認事項を受け入れていただければ青色申告については見逃します」と交渉材料にされる事があります。

青色申告の取り消しとなると多額の追徴税額が発生するケースも多く、「多少の納税で済むなら・・・・」と交渉に応じてしまう納税者も多いでしょう。

その判断が誤りとは言えませんが、調査官の言動を鵜吞みにせずに、せめて一度「青色申告が取消されるとどうなるのか」「本当に青色申告の取り消しがありうるのか」を検討すべきかと思います。

 

そこで当コラムでは何回かにわけて青色申告の取消しについて解説したいと思います。

 

 

青色申告が取消しされたら

青色申告の取消しでまず理解すべきなのは「該当事業年度まで遡って、その承認を取消す」という点です。

つまり、例えば5期前に取消しの要件を満たしていた場合、5期分全ての青色申告が取消しとなり白色申告になってしまうのです。

 

 

青色申告が取り消された場合

・欠損金の繰越控除(法人・個人)

・少額減価償却資産の特例(法人・個人)

・青色申告特別控除(個人)

・青色申告の専従者給与(個人)

 

が否認されることになります。

他にも税制上有利になる措置法の多くが青色申告を要件としておりますので、これらを利用している場合は多額の追徴課税が発生すると思われます。

 

 

青色申告が取消されるケース

①帳簿の備え付けがされていない場合

「電子帳簿保存法で青色申告が取り消される可能性がある」と言われていたのは、この要件が根拠になります。

この要件は帳簿の備え付けがされていないケースに加え、備え付けがあっても税務調査で提示しない事も含まれます。

 

②税務署長の指示に従わなかった場合

こちらは実務的に登場する事はほぼありませんので省略いたします

 

③その事業年度に係る帳簿書類に取引の全部又は一部を隠蔽し又は仮装して記載し又は記録し、その他その記載又は記録をした事項の全体についてその真実性を疑うに足りる相当の理由があること

こちらは重要ですので省略せずに記載しました。単に「仮装又は隠蔽」だけを条件として挙げる人が多くいますが、それは明らかに間違いです。

「仮装、隠蔽」は重加算税の要件でもあります。そのため「重加算税=青色取消し」という論点が出てきそうですが、あくまでも帳簿書類等に「記載又は記録をした事項の全体についてその真実性を疑うに足りる相当の理由がある」ことが要件となっています。

 

この論点は事務運営指針を参考に基準を考えることになります。

 

④申告書を提出期限までに提出しなかった場合

こちらは法人のみに適応される要件ですで個人への適用はありません。

実務的には「法人が二期連続で期限後申告or無申告」の場合に適用されます。

 

今回は青色申告取消しのデメリットとその要件の概略をお伝えしましたが如何だったでしょうか。

次回以降は各要件の詳細を解説していこうと思います。

 

 

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