太田和之税理士事務所

コラム

株式譲渡・配当の税務⑤~申告期限後の譲渡損失の繰越控除~

2021年11月4日

以前お話したように(株式譲渡・配当の税務④~損益通算と繰越控除~)、株式譲渡所得が赤字だった場合、譲渡損失の申告をすればその赤字を3年間繰り越す事が出来ます。
申告した年の税額は変わらなくても、将来の税額が減る可能性があるのです。

 

しかし、「面倒な思いをしてまで申告しても(今年の)税金が変わらないんじゃ意味ないな・・・」と考え赤字の申告をしていない方も多くいらっしゃいます。

確かに赤字の年は骨折り損のくたびれ儲けになってしまいます。しかし、問題は来年・再来年に大きく利益が出たときです。

しまった、去年赤字の申告をしていれば税金が返ってきたのに!!!

 

と今更後悔しても遅い・・・・・とは限りません

 

遅くないケースも多々ありますので、慌てず税理士に相談してみましょう。

 

更生の請求
何故後悔しても遅いケースと遅くないケースがあるのか。これは「更正の請求」という税務上の手続きの性格によるものです。
「更正の請求」は「間違えた確定申告書」を提出してしまった場合に、正しい申告書を提出して税額の還付を受ける、という手続きです。
「間違えた確定申告書」とは具体的には

 

(1)法律の規定に従っていなかった
(2)計算誤りがあった

 

を言います。

ここで言いたいのは、あくまで間違えた申告を修正する手続きであって、いくら税額の還付が出るからといって正しい申告から正しい申告への修正は認められていないという事です。

 

後悔しても遅いケース

 

今から過去の損失を申告することが出来ないのは

①損失が出ている口座が特定口座で、かつ「源泉徴収あり」を選択している
②損失が出ている年から現在まで、1度でも確定申告書を提出している

の両方を満たす場合です。

 

特定口座で「源泉徴収あり」を選択している場合、申告するかしないかは納税者が選択する事が可能です。よって申告しなかったのは納税者が「申告しない」を選択したとみなされます。
この「申告しない」は正しい処理であり、決して「間違え」では無いため更正の請求を行う事は出来ません。
ただし、損失が発生した年から1度も確定申告書を提出していない場合は「まだ申告書を提出していないだけ」という状態であり、更正の請求ではなく「期限後申告」という形で過去の損失の申告をする事ができます。

 

 

後悔しても遅くないケース

 

上記を踏まえて今からでも過去の損失を申告して税額の還付を受けられるケースは

 

①損失が出ている口座が特定口座で、かつ「源泉徴収なし」の場合
②損失が出ている口座が一般口座の場合
③損失発生時から現在に至るまで確定申告書を提出していない場合

 

のいずれかとなります。

 

①損失が出ている口座が特定口座で、かつ「源泉徴収なし」の場合
②損失が出ている口座が一般口座の場合
このケースは「本来申告する必要がある」ので、これを申告していないのは「(1)法律の規定に従っていなかった」に該当し、更正の請求を行う事が出来ます。

 

③損失発生時から現在に至るまで確定申告書を提出していない場合
特定口座かつ「源泉徴収あり」であっても、まだ一度も申告書を提出していない場合は「申告する」か「申告しない」かはまだ選択しているわけではありませんので、今からでも損失が発生した年の申告をする事が可能です。

ただし、譲渡損失の繰越控除は毎年繰越す額を確定申告書に記載する必要がありますので、途中一度でも申告書を提出している場合は今期まで赤字を繰り越すことはできません。

 

 

株式の譲渡所得と配当所得について5回に分けて解説をしましたが、如何だったでしょうか。

この論点は複数の申告方法が選択する事が可能ですが、その分かえって損をする申告でも「正しい申告」となってしまい「更正の請求」を受けることが難しくなってしまいます。

一度した申告が修正できないので非常にリスキーですので、少しでも不安があれば一度税理士への相談をした方がいいかと思います。

 

 

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・配当控除
・住民税申告不要制度

・損益通算と繰越控除
・申告期限後の譲渡損失の繰越控除

 

 

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